東京・横浜支部 上田明楽
2014年1月19日初稽古をかねた新年会は、東京・渋谷駅に近い「セルリアンタワー東急ホテル」の三十九階で開かれました。この日は雲ひとつない快晴で、西の窓からは林立するビル群の彼方に、雪をいただき銀色に輝く富士山の流麗な姿が望めます。振りかえると、都心の密集する街並みの向こうに広々とした東京湾が開けています。眺めは最高です。
初稽古は、立礼の清明手前。お手前を担当したのは、結婚を四月にひかえ幸せいっぱいの井上由楽さん。お取次は、大島紀楽さん。二人とも毎週火曜日の夜、仕事帰りに塩瀬教室に通って十五年余りという熱心なベテランです。お手前の後は、御家元のご感想、可楽家元嗣のお話があって初稽古をすませ、フランス料理で会食をしながら、一人ひとりが新年の抱負やら日頃の思いやらを述べ、恒例のプレゼントの交換などに興じて、新年の初顔合わせを終わりました。
このときの御家元のお話のなかで強く印象に残っていることがあります。今年は文章を書くことに力を入れたい、とおっしゃって、二つのことを話されました。一つは京都新聞に連載してきた「清風の茶〜京を舞台の煎茶人〜」に手をいれて、一冊の本に仕上げること。もうひとつは、夏目漱石と煎茶のかかわりについて書き下ろすことでした。
NHK文化センター青山教室で御家元の「茶の文化史」を学んでいる受講生は、新聞記事を購読していて、売茶翁をはじめ石川丈山、隠元禅師などについても、かなり興味をもつようになっているだけに、期待が高まっています。また日本人ならほとんど誰もが読んだことのある『坊っちゃん』や『三四郎』の作者が、煎茶をどのように愛好し、煎茶にどんな思いをもっていたのか、漱石をめぐる御家元の深い洞察と新たな知見が一日も早く上梓されるのを、皆が待ち望む一年です。