2013年5月19日、下鴨神社に於いて煎茶献茶式が行われ、式後は拝服席が催されました。
午前10時、社務所前でお清めを受けた献茶列一同は、神官方、宮司様、可楽家元嗣、小川流奉仕者と続き、拝殿前中門に着座。雅楽奏上、祝詞奏上を経て、御祓いを受けて、舞殿へ。この献茶式は炭手前から可楽家元嗣みずから行われます。道具が清められ手前座が整えられ、献茶手前へ。初めは賑やかな人声が響いていた境内も、この頃にはしんと静寂にみちています。その中で淹れられた清風の茶は、師範より神官方へひきつがれ、本殿二神の御前に供えられ、無事献茶式は終えられました。水屋奉仕、細田徳楽師範・瀬本章楽師範、供茶奉仕、菅井翠楽師範・今橋治楽師範。続いてお茶席が二席設けられました。
供御所では、村瀬栲亭の「茶籃銘ならびに序」の軸をかけ、五世尚古齋造の環付花籠に珍しい伊勢なでしこ等を活け、清明手前でお客様をお迎えいたしました。棚は葵透紋入三清棚、唐物の染付の水注に、家元造意の宜興茶瓶を用い、竹泉の唐子図茶碗に、茶銘「橘」の雫が注がれてお客様の前に。席の緊張した空気が、一煎喫されたあとはおだやかな気配へと変わっていきました。
かわって直会殿席では、立礼の卓を使い、略盆の玉露手前。家元が書かれた「清幽」の字もみずみずしい小さな白泥涼炉にかけた湯瓶から湯気がほどよく沸き、染付山水の湯冷しに湯が注がれます。唐物の形よい茶托が丁寧に拭き清められたのち、百合の図が浮き彫りとなった白釉の茶瓶から玉露「くいな」が淹れられました。お菓子は長久堂の「さくらんぼ」。すはま製のかわいい形は、お客様の微笑を誘っていたようです。この席では、今年は今橋治楽先生の若い御社中さんが、直門にまじって懸命に御奉仕なさいました。こうして若い息吹が小川流に新しい風を吹き入れられて、新しい時代へと繋げられていきます。
途中、激しい雨模様となり、傘の出番にお客様方も戸惑われたようでしたが、なんとか無事に両席を終えることが出来ました。