東京・横浜支部 上田明楽
2012年1月15日、お家元ならびに可楽家元嗣にご臨席いただき、帝国ホテルにおいて新年会が行われました。
会の前半は、家元嗣から一時間ほど「新春を迎えての抱負」を伺いました。茶味の研究、伝統の継承と新しい事への挑戦など、小川流をますます隆盛へと導く力強いお話でした。
特に、家元嗣が以前から研究されている「煎茶席における非言語コミュ二ケーションで社会貢献を」というお話は、たいへん興味深く拝聴いたしました。私も日頃、煎茶席には、癒しの空間があると感じています。たとえば、「仕事帰り、疲れたのでお稽古をお休みしようと思ったけれど、来てよかった。気持ちが穏やかになり疲れがとれました。」「病院通いが続き落ち込む毎日ですが、気分が軽くなりました。」など、お稽古の後、しばしば耳にします。「頑張ってください」「元気を出しなさい」などと、声に出して叱咤激励はしませんが、煎茶席に座ると、みなさん自然に笑顔になります。小川流煎茶の茶味の力でしょうか、合理的な美しい手前の魅力ゆえでしょうか。
谷川俊太郎の「心の居場所」という詩が目に留まりました。人は、いつも不安で自分の居場所も分からず、心はうろうろおろおろ迷子です、という意味の詩です。気持ちが落ち着く場所、安心し前向きな気持ちになれる場所・・・。小川流の煎茶席は、そんな迷子の心をとりもどせる居場所になっていると思います。これから社会は、ますます多様化、複雑化し、心の居場所を探す人が増えることでしょうから、家元嗣のご研究の成果が、とても楽しみです。
新年会の後半は、お食事と団欒、そして恒例のプレゼント交換と続き、笑い声いっぱいの会場で、今年もお稽古に精進することを、皆で誓いました。