後楽堂直門 今橋治楽
2011年3月5日、下鴨茶寮五代目女将・佐治八重子さんの初めての著書『老舗の京野菜歳時記』のご上梓を祝う、出版記念茶会が催されました。
女将さんのたっての願いから、三千家と小川流合同のお茶会。女将さんの言葉を借りれば「夢の茶会」を実現する事となり、小川流は可楽家元嗣が席主を務められました。
当日は、まだまだ肌寒い早春。各界からのお祝いの花に囲まれたお玄関で、女将さんが、下鴨神社宮司様、潟Eエッジ会長様らとともにお客様をお一人ずつお出迎え。とてもなごやかな風景です。
そしてお客様は各流派の席へ進まれました。小川流のお席・早雲庵は玄関を入ってすぐのところ。外周りはガラス戸になっていてお庭の緑が美しく、お煎茶むきのお部屋です。普段、お食事をされるお部屋ですので、勿論水屋もありませんし、お席作りからとなりました。可楽家元嗣を中心とした創意工夫のもと、素敵な立礼席に様変わりし、立礼棚一文字煎茶手前でお迎えいたしました。
お客様は小川流と馴染みのある方、初めての方と色々でしたが、中には煎茶の心得がないのでと不安そうな男性が、一口小川流の茶味を喫されますと「うーん、甘いなぁ。まだ香りがのこっている」と等々歓声があがります。
漏れ聞こえる歓声に玄関で案内をしている出版社のスタッフも「私にも飲ませて」と急遽お席入り。皆様初めての出会いの味に女将さんが小川流を選ばれた理由がわかったと、ご納得のご様子で嬉しい限りでした。
お菓子は長久堂の洲浜製で、下鴨茶寮ののれんの意匠である扇を模り、ご銘は「寿扇」。こちらも大変好評でした。
この度の会は、各々肩書きをお持ちのお客さまばかりでしたが、とにかく女将さんを祝う事に重きを置いた会にしたいという可楽家元嗣の思いから、それに囚われる事なく、お席では小川流の由来や、女将さんとのご縁等々の話に花が咲きました。
四流派全て回られたお客様方は、京の茶道文化を一度に味わうという贅沢でなごやかで、またはんなりとした一日をお過ごしになられたことでしょう。