野口久楽社中 白井 尚美
京都市では、伝統文化から現代美術まで、幅広い分野にわたる京都の一流の芸術家を学校に招いて、子供たちに授業を行なう特別授業を、2007年度から実施しており、2010年11月5日伏見区醍醐の池田東小学校において、小川流煎茶の授業が執り行われました。
小学3年生2クラス総勢50人を前に、まず御家元がスクリーンをお見せになりながら、日本や中国の歴史的背景を織り込み、煎茶の魅力や煎茶道の歴史および特徴などについて、たいへんわかりやすくご説明されました。
御家元のお人柄溢れる楽しいお話は、それまで笑顔でおしゃべりしていた子もはしゃぎ回っていた子もたちまち魔法にかかったように煎茶の世界へ引き込み、煎茶について全く白紙である子供たちの心のキャンバスに絵を描くように明瞭に浸透していったようでした。お話が終わると、すっかり煎茶の虜となった子供たちからは、お道具のことやお茶の葉のことなどに対する様々な質問が飛び交いました。その都度、御家元は何ともお優しい口調で丁寧にお答えになっておられました。
御家元のお話の後に、観月玉露手前をさせていただき、50人の子供たち全員に一煎をお出ししました。おままごとに使用するような可愛い器に目を奪われ、また、ごく少量の茶液にどの子も驚いていたようですが、「美味しい」「苦くない、甘―い」と喜びの声があちこちで聞こえ、喜んでいただけたようで本当によかったと嬉しく感じました。最後に「美味しいお茶とお菓子をありがとうございました。」という元気な可愛い子供たちのお礼の言葉をいただいて、楽しい雰囲気のうちに授業が終了いたしました。
子供たちのお煎茶との素晴らしい出会いが、将来どこかで実りのあるものとなりますように祈りつつ、このような機会をお与えいただきましたことに心より感謝申し上げます。改めてこれからも一層精進して参りたいと存じます。