「聞風会」における茶会と家元講演

後楽堂直門 佐々木和楽

    

 緑陰に佇むかやぶき屋根の山門をくぐり、二つの白砂壇に囲まれた道を通るとそこは浄域。心身を清めて伽藍へと進みます。
 2010年6月7日、日本を代表する企業の精鋭、幹部の方々の会合「聞風会」において小川流煎茶の茶会とお家元の講演が、法然院にて執り行われました。
 ここ法然院は京都の錚々たる学者、文人の墓所としても名高く、三銘椿の庭は人々に愛されてきました。時空を超えて文人墨客の集う地といえます。
 お茶会、講演会共におよそ四百年前に建築の、後西天皇の皇女の御殿が移建された方丈で行われました。重要文化財で、火は使えず電気の設備もないため延長コードをひき込み、まず随所におもてなしの明かりの設営です。
 暮れゆく光と行燈の灯りに照らされたお席は、鉄斎翁筆による扇面貼り交ぜの山字屏が浮かび上がり、正に幽玄の世界が広がります。
 本堂で勤行を終えられた皆様をお迎えし、小川可楽家元嗣による本格煎茶手前が供されました。典雅でしかも凛とした家元嗣のお手前にお客人の皆様、誰もが見とれてしまう一時。後見のお家元から丁寧な説明があり席も和み「美味しい!」感嘆の声が上がります。方丈庭園に湧き出ている清泉「善気水」を使わせて頂き、茶味も一層引き立ちました。
 引き続きお家元の講演、テーマは「煎茶の文字が意味する世界」。煎茶の歴史を軸に、幕末近代という騒乱の時代背景へと展開され、煎茶の持つ社会的役割の核心に進まれました。聞風会が<未来を見つめフロントビューを持った方々>の集まりであることを強く印象付けるまなざしに、一段と熱のこもった講演となりました。
 小川流煎茶の世界がまた一つ広がった感慨深い夕べ、微力ながらお手伝いさせて頂き、この貴重な時を共有させて頂けたことは至上の喜びであり感謝の念でいっぱいです。

    

    

 


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