ティ・エスプレッソ

東京支部 上田明楽

 日本の伝統文化の一つである煎茶道をもっとたくさんの方々に知っていただきたい、という気持ちがいつも頭の中にあります。
しかし煎茶道という文化があることさえ知らない人が多いのが現実です。 広める機会を作らねば、と考える日々です。 このほど、ささやかながら二つの催しに招かれる機会に恵まれましたので、ご紹介します。

(その一)家庭科担当の先生の研修会

 第四十六回東京地区教員研修会が6月5日、昭和女子大学附属昭和小学校で開催され、その中の家庭科研究会で講師を務めました。 参加されたのは家庭科担当の先生方30名ほどで、前半の2時間はお家元の著書やNHK文化センターの「茶の文化史講座」を参考に、「お茶の誕生から煎茶道まで」をお話ししました。 後半の2時間は、立礼の略盆玉露手前をしながら、美味しいお茶の淹れ方を解説しました。
 四国出身の先生は、「夏目漱石の草枕の話を聞いて、祖母が近所の人たちと少量のお茶を淹れていたのを思い出した」と話され、 男性の先生のなかには「お茶の美味しさに驚いた、ここで手前の手ほどきをしてほしい」と熱望する方もおられました。また「煎茶さん、ごめんなさい。日々の雑な淹れ方を反省しました」という感想もありました。
ここでお話ししたことが、先生から生徒の皆さんに伝わり、それが生活の中に生かされ、日々の暮らしがより豊かになっていくことにつながればいいな、と思った一日でした。

  

(その二)「アメリカ外交政策評議会」訪日団の文化セッション

 8月下旬、アメリカのキングリッチ氏(アメリカ外交政策評議会顧問、元下院議長)一行が東京財団の招きで来日しました。
滞在中の3日間に安全保障・外交・文化の3つのセッションが企画され、その文化セッションで小川流煎茶についてご紹介しました。
 一行を招いた東京財団の会長は加藤秀樹さんで、「構想日本」の代表でもあり、民主党政権の発足とともに行政刷新会議の事務局長に就任した、いまや時の人です。 この加藤さんからお家元に依頼があり、私が出席しました。 東京・六本木の料亭を会場に、お集まりになったのは、日本側から加藤秀樹さんのほか久保文明、松井孝典の両東大教授、アメリカ側はキングリッチ夫妻以下10名という顔ぶれでした。
 煎茶道を好んだ文人たちのこと、流祖小川可進のこと、アメリカ最初の駐日総領事ハリスと煎茶との深い関係など、一行の皆さんは興味深く聞いてくださり、小さい茶碗や急須なども珍しいのか、盛んにカメラを向けていました。
 お茶が少量なのに、みなさん驚かれたご様子でしたが、「スイート」と不思議そうな顔をなさる方もおられ、団長のキングリッチ氏は「これはティ・エスプレッソだ」と、にっこりされました。 エスプレッソとは、なかなかうまい比喩だと感心しましたし、お茶本来の濃密なうま味をご理解いただけたようにも思います。
 日本の茶道には、茶の湯ともう一つの煎茶道があることを分かっていただけたことは、喜ばしいかぎりです。

 

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